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イスラム金融のみを扱う専業銀行と、普通の金融機関がイスラム金融も提供する兼業銀行とスイス系の金融機関で富裕層の資産管理業務やデリバティブ取引に強いことでも名高いUBSは、2002年、中東の金融センターであるバーレーンにイスラム金融専業銀行のNORIBA(ノリバ)を設立した。
しかしながら、2006年にはその拠点を閉じ、ドバイのUBS本体の支店からそれまでのイスラム金融オペレーションを管理するようになった。
こうした意思決定の背景には、NORIBAがUBSブランドを打ち出しきれなかったことも影響しているとみられる。
ちなみに、NORIBAとは、「NO」リバー、つまり「金利なし」というイスラム金融の特徴を捉えたオリジナリティあふれるネーミングであった。
組織のあり方において金融法制が影響を受ける点については、近年のマレーシアの状況が参考になろう。
マレーシアでは、1994年以降イスラム兼業銀行がイスラム金融事業を大幅に拡張していったが、一方でウィンドウ方式のイスラム金融事業は、イスラムの教義を遵守する観点では不十分とする見方もあった。
イスラム金融として供与される資金が、例えばコンベンショナルの短期金融市場での有利子調達を資金源としている可能性もあるからである。
この点を含め、中東など教義遵守に厳格な国々から、マレーシアはさまざまな点で異論を唱えられることも少なくなかった。
こうした中で、金融当局は、イスラムの資金と一般の有利子資金が混在することのないよう、イスラム金融のウィンドウを設けている機関には、専業子会社を設けることを奨励した前者は、文字通りのイスラム金融専業銀行である。
この場合、資金調達から貸出・運用等まで、すべてイスラム金融方式であることが前提となる。
イスラム金融専業銀行は、前述のシティグループの例のとおり、有利子の貸出業務も行なう一般の銀行が専業子会社銀行を設立することで生まれるケースもあるほか、イスラム圏などでは地場のイスラム専業銀行が既存の銀行とは独立して設立される事例も多い。
兼業銀行は、有利子業務も行なう一般の金融機関が、同じ主体のままイスラム金融を提供するものであり、「ウィンドウ(窓口)」と呼ばれることも多い。
窓口のみ設ける、という意味である。
この場合、イスラムの資金とそうでない資金を明確に分けるため、営業フロアや支店、勘定などが一般の金融のものと分断される場合もある。
専業か兼業かという組織のあり方は、各金融機関の事業・コスト戦略と、現地の金融法制等との兼ね合いの中で決まってくる。
例えば、各社の戦略の観点では、UBSの事例が興味後子会社の専業形態となっていく可能性が高い。
ところで、最近では、イスラム金融ビジネスのブランドカを強化するため、機関名にアラビア語のブランド名を付ける例が増えてきた。
前述したHSBCアマナは古い例であるが、スタンダード・チャータード・サーディク、BNPパリバ・ナジマなどは2007年にできたものである。
シンガポールの不動産会社キャピタランドも、キャピタランド・アマナと称してイスラム金融事業を行なっている。
いずれにせよ、このように兼業銀行という形態でもイスラム金融ビジネスに参入できるということが、欧米を中心とする国際的金融機関がイスラム金融に着手しやすかった一因とみてよいだろう。
既存の金融機関によるスクークの引受け国や業態によっては、イスラム銀行やイスラム金融窓口の認可などを受けなくても、イスラム金融商品を提供できる場合がある。
例えば、イスラム投資ファンドなどは、イスラム銀行とは関係ないため中央銀行等の管轄とならず、投資ファンドの規制体系の中で扱われることが多い。
また、成長著しいイスラム債券(スクーク)の引受けについても、一般的には既存の金融機関が普通イスラム金融が伸びている背景には、プロローグでも紹介したように、非ムスリムを含めて万人が利用できるという事情も影響している。
ここでは、とりわけ非ムスリムが大半である日本人みなさまのためにイスラム金融の位置づけを簡単に整理しておこう。
欧米系の金融機関が名を連ねていることが分かる。
そして、これらの機関がイスラム金融業界に参入することで、普通の金融業界に一般的に備わっている高度な金融技術、例えばデリバティブ取引や証券化、ファンド組成などの技術や知識を活かすことが可能となっている面があり、イスラム金融業界の発展に貢献しているという構図も興味深い。
なお、日本の機関についても、このところいろいろな取り組みがみられ始めているが、それはあとにおいて論じることとしたい。
「イスラム金融はムスリムのみ利用するもの」というのは、ありがちな誤解である。
確かにイスラム金融は、イスラムの教義に反しない形での金融取引を実現するために始まったものである。
しかし、イスラム金融機関側では、非ムスリムであることだけで取引機会を排除することは基本的にはない。
非ムスリムによるイスラム金融利用の例は枚挙に逼がない。
企業等の取引の事例では、例えばシェルやネスレ、テスコ(英国系スーパーマーケット)といった欧州系企業がマレーシアでイスラム債を発行したり、米国のエネルギー企業であるイースト・キャメロン・ガスやドイツのザクセン・アンハルト州政府、世界銀行やそのグループ機関である国際金融公社もイスラム債を発行したりしている.そうして発行されたイスラム債を、非イスラムの投資家が保有することも決して珍しくはない。
個人レベルで資金供給側の主体をみても、マレーシアでは中華系非ムスリム(人口のおよそ40%を占める)のイスラム銀行預金利用が多く、全体の過半を占めることさえあるという。
要点1イスラム金融は、ムスリムだけのものではない。
また、私の知り合いでロンドン在住の日本人金融マンも、英国イスラム銀行に預金口座を保有している。
この点については、ハラル食品と呼ばれる、教義面で問題なく調理された食料品(お祈りを捧げられるなどして処理された食肉や、豚肉・アルコールなどと接しないで調理されたもの)とも似た構図である。
例えば、マレーシアやシンガポールでは、マクドナルド全店においてハラルとなっており、店舗のカウンター近くには「ハラル」の証明書が掲示されている。
これらの店舗においては、イスラムの教義に適合した商品だからといって非ムスリムを排除することはないし、非ムスリムの顧客は、ハラルであることを知っていようがいまいがマクドナルドを普通に利用している。
要するに、宗教に関係なくムスリムであろうとなかろうと利用できるもの。
それがハラル食品であり、イスラム金融なのである。
「ムスリムは、イスラム金融のみ利用するのではないか」という固定観念を持たれることも非常に多い。
要点2ムスリムは、イスラム金融のみ利用するわけではない。
すでに前節でも簡単に触れたが、「ムスリムはイスラム金融しか利用しない」ということはない。
彼らは有利子金融も利用しているのが実情であり、むしろ全体としてみれば、ムスリムとはいえ、一般の金融を利用する方が金額的には多いと推察される。
前節では、ムスリムが「仕方なく」有利子の金融を利用することについて述べた。
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